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IT産業調査室

IT/ICT産業の業績や就労環境などを調査し分析しています

2007年度通期410社の業績 売上高は4.2%増の51兆7800億円

純利益は1.7%減、純利益率は2.6%

 昨年4月から今年3月末までに通期業績を発表したICT関連の株式公開企業410社の業績がまとまった。売上高は51兆7,812億6,800万円で前年度比4.23%増、本業の利益を示す営業利益は3兆4,723億4,200万円で13.68%増と増収増益だったが、特別損益と課税考課を調整した最終利益(純利益)は1,兆3,307億2,300万円で1.73%減だった。営業利益率は6.71%で前年度に対し0.56ポイント(9.07%)増加、当期利益率は2.57%で0.16ポイント(5.71%)減少した。

コンピュータメーカー3社のIT事業部門

 このうちコンピュータメーカー3社の業績について各社決算短信の「IT事業部門」に絞ると、日立製作所は11兆2,267億3,500万円から2兆7,611億円に、富士通は5兆3,308億6,500万円から2兆1,022億1,600万円に、NECは4兆6,171億5,300万円から2兆8,661億7,000万円にそれぞれ補正される(売上高ランキングにはこの数値を採用する)。再集計すると、売上高は38兆3,360億100万円で前年度比3.20%増、営業利益は3兆1,737億7,000万円で4.74%増となる。営業利益率は8.28%で2006年度から0.12ポイント上昇する。

基本4項目の2期連続比較が可能なのは402社

 コンピュータメーカー3社はIT部門の経常利益、当期利益を公表していない。またラックホールディングス(ジャスダック上場)は企業合併のため2006年度業績がない。システム・テクノロジー・アイ(ゴメス・コンサルティングフラクタリストガイアックスの4社は決算期変更のため、2006年度と単純比較ができない。2007年度業績の基本4項目(売上高、営業利益、経常利益、当期利益)について2期連続比較が可能な402社で集計すると、売上高は30兆5,688億4,400万円で前年度比3.04%増、営業利益は2兆7619億8900万円で同5.45%増、当期利益は1兆3164億8300万円で3.20%増だった。営業利益率は9.04%で2006年度から0.21ポイント(2.34%)、当期利益率は4.31%で0.01ポイント(0.15%)それぞれ増加した。

決算方式を変更した19社を除外

 2007年度中に決算方式を単独から連結に変更した企業が19社あった。この19社を除いた383社で集計すると売上高は前年度比3.00%増の30兆4,774億4,100万円、営業利益は5.44%増の2兆7,531億1,700万円、当期利益は3.31%増の1兆3,126億3,900万円だった。営業利益率は9.03%で2006年度から0.21ポイント(2.36%)増、当期利益率は4.31%で0.02ポイント(0.29%)増だった。

2008年度見通し 売上高は伸び悩み

 2008年度の業績予想について、売上高、営業利益、経常利益、当期利益の基本4項目を明らかにしているのは386社だった。通信サービス系の兆円超企業をはじめ24社が業績予想を公表していないため、予想売上高合計は2.34%増の43兆,9514億4300万円となる。386社の2007年度売上高対前年度伸び率(実績値)は4.65%だったので、2006年度→2007年度より2007年度→2008年度の景況が悪化すると見ている企業が少なくない。

 予想営業利益は10.32%増(2007年度実績は14.75%増)の3兆959億1900万円(営業利益率は0.51ポイント増の7.04%)、予想当期利益は51.03%増(同8.50%減)の1兆5,175億3,800万円(当期利益率は1.11ポイント増の3.45%)となった。売上高の伸びは低いものの、収益体質が大幅に改善するという強気の見通しが示された。

 ここからコンピュータメーカーを除いた383社の予想売上高は22兆7014億4300万円で前年度比4.27%増(383社の2007年度実績3.43%増)、予想営業利益は2兆3259億1900万円で10.81%増(同4.38%増)、予想当期利益は1兆3425億3800万円で35.32%増(同2.68%減)となっている。予想営業利益率は10.25%(383社の2007年度実績9.64%)、予想当期利益率は5.91%(同4.56%)となる。

 410社の予想売上高の伸び率が2%台となったのは、コンピュータメーカーが慎重な予測をしているのが要因。米サブプライム問題に端を発する金融不安、輸入品(原油、食糧、鉄鉱、レアメタル等)の価格高騰に伴う物価上昇と企業業績の低迷および、本格的な少子高齢化時代に向けた社会保障制度や非正規雇用の将来不安といったマイナス要因がある。結果として情報システムユーザー企業は不急不要の新規IT案件を引き締めるとの予測が作用している。

 にもかかわらず営業利益、当期利益が改善すると予想する企業が多いのは、①選好受注の強化、②オフショア開発の拡大など外部発注価格の圧縮、③賃金上昇率の抑制、④内製化率の向上――等の施策に相乗的な効果を期待しているためと考えられる。