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IT産業調査室

IT/ICT産業の業績や就労環境などを調査し分析しています

特サビ実態調査のITサービス産業 2015年は2万9千社/従事者103万人で21.4兆円

 ITサービス業の動向を知る公的統計は、経済産業省の「特定サービス産業実態調査(特サビ)」だ。名称がよく似ているので「特定サービス産業動態統計」と間違われやすいのだが、実態調査は約2,500社の月ごとの売上高と従業員数が対象となっている。

 特サビは事業所向けサービスと個人向けサービスに分かれ、事業所向けサービスは「ソフトウェア」「情報処理・提供サービス」「インターネット附随サービス」のほか、「映像情報制作・配給」「音声情報制作」「新聞」「出版」「デザイン」「広告」など21業種、個人向けサービスは「冠婚葬祭」「映画館」「学習塾」など7業種で構成されている。

 本稿では2016年8月に公表された2015年分(最新データ)に収録される事業所向けサービスの「ソフトウェア」「情報処理・提供サービス」「インターネット附随サービス」の3種を使用する。ちなみに特サビ実態調査2016は、経産省総務省が共管で実施した「平成28年経済センサスー活動調査」に伴い中止となっている。

 筆者が保有しているのは株式を公開しているICT関連企業約530社の半期・通期のデータだ。それに対して特サビは一部の個人事業者まで網羅しており、集計企業数は3業種で約3万社・3万6千事業所と圧倒的に多い。おおむねICTサービス産業全体をカバーしていることになる。

 

特サビ3業種の2015年業績動向

【ソフトウェア】 事業所数は2万2,531(単独事業所1万5,098、本社2,996、支社4,436:単独事業所+本社=1万8,094社)で、従業員数は66万8,974人、別事業者からの派遣要員を含む事業従事者数は67万9,786人(うち本業の従事者は60万8,378人)、売上高は12兆9,744億29百万円(うち本業の売上高は10兆5,634億32百万円)だった。

 前年(2014年)は2万2,331事業所(単独事業所1万5,758、本社2,756、支社3,817:単独事業所+本社=1万8,514社)、従業員数は66万3,745人、事業従事者数は66万9,287人(うち本業務従事者60万5,697人)、売上高は12兆6,189億11百万円(うち本業の売上高は10兆2,933億81百万円)だった。

 2016年の事業所数は0.9%増(単独事業所4.2%減、本社8.7%増、支社16.2%増)、従業員数は0.8%増、事業従事者数は1.6%増(うち本業の従事者は0.4%増)、売上高は2.8%増(2.6%増)となる。

 単独事業所と本社を合わせた企業数は2.3%減、1社当たり従業員数は37.0人で3.1%増、事業従事者数は37.57人で3.9%増(うち本業の従事者は33.62人で2.8%増)、1社当たり売上高は7億1,705.7万円で5.2%増(うち本業の売上高は5億8,380.9万円で5.0%増)だった。

 事業所、事業従事者の増減を勘案した売上高前年比を計算すると、1事業所当たり売上高は5億7,585万円で1.9%増(うち本業務の売上高は4億6,884.0万円で10.2%増)、事業従事者1人当たり売上高は1,908.6万円で1.2%増(うち本業務の売上高は1,736.3万円で2.1%増)だった。

 

【情報処理・提供サービス】 事業所数は1万0,944(単独事業所7,798、本社988、支社2,158:単独事業所+本社=8,786社)で、従業員数は29万3,990人、別事業者からの派遣要員を含む事業従事者は30万0,451人(うち本業の従事者は24万5,660人)、売上高は6兆7,745億40百万円(うち本業の売上高は4兆8,444億48百万円)だった。

 前年(2014年)は1万1,071事業所(単独事業所7,795、本社1,052、支社2,224:単独事業所+本社=8,847社)、従業員数は31万0,990人、事業従事者数は31万3,277人(うち本業の従事者は25万5,516人)、売上高は6兆7,306億02百万円(うち本業務の売上高は4兆7,639億09百万円)だった。

 2016年の事業所数は1.1%減(単独事業所0.04%増、本社6.1%減、支社3.0%減)、従業員数は5.4%減、事業従事者数は4.1%減(うち本業務従事者3.9%減)、売上高は2.8%増(2.6%増)となる。

 単独事業所と本社を合わせた企業数は0.7%減で、1社当たり1社当たり従業員数は33.5人で4.8%減、事業従事者数は34.20人で3.4%減(うち本業従事者は27.96人で3.2%減)、1社当たり売上高は7億7106.1万円1で1.4%増(うち本業の売上高は5億5138.3万円で2.4%増)だった。

 事業所、事業従事者の増減を勘案した売上高前年比を計算すると、1事業所当たりは6億1901.9万円で1.9%増(うち本業務は4億4265.8万円で2.8%増)、事業従事者1人当たり売上高は2245.8万円で4.5%増(うち本業の売上高は1972.0万円で5.8%増)だった。

 

【インターネット附随サービス】 事業所数は2,436(単独事業所1770、本社359、支社307:単独事業所+本社=2,129)で、従業員数は4万6,913人、別事業者からの派遣要員を含む事業従事者数は5万0,386人(うち本業の従事者4万7,454人)、売上高は1兆6,197億39百万円(うち本業の売上高は1兆4,868億31百万円)だった。

 前年(2014年)は3,012事業所(単独事業所2450、本社268、支社294:単独事業所+本社=2,718)、従業員数は5万1,047人、事業従事者数は5万4,447人(うち本業の従事者4万9,114人)、売上高は1兆6,169億03百万円(うち本業の売上高は1兆4,650億73百万円)だった。

 2016年の事業所数は19.1%減(単独事業所27.8%減、本社34.0%増、支社4.4%増)、従業員数は8.1%減、事業従事者数は7.5%減(うち本業の従事者3.4%減)、売上高は1.8%増(うち本業の売上高は1.5%増)となる。

 単独事業所と本社を合わせた企業数は21.6%減、1社当たり従業員数は22.0人で17.3%増、事業従事者数は23.67人で18.2%増(うち本業従事者は22.29人で23.4%増)、1社当たり売上高は7億6,079.8万円で27.9%増(うち本業の売上高は6億9,837.1万円で29.6%増)だった。

 事業所、事業従事者の増減を勘案した売上高前年比を計算すると、1事業所当たりは6億6,492万円で23.9%増(うち本業の売上高は6億1,035.8万円で25.5%増)、事業従事者1人当たり売上高は3,214.7万円で8.3%増(うち本業の売上高は3,133.2万円で5.0%増)だった。

 

【3業種合計】 事業所数は3万5,911(単独事業所2万4,666、本社4,343、支社6,901:単独事業所+本社=2万9,009社)、従業員総数は100万9,877人、別事業者からの派遣要員を含む事業従事者数は103万0,323人(うち本業の従事者は90万1,492人)、売上高は21兆3,687億08百万円(うち本業の売上高は16兆8,947億11百万円)だった。

 前年(2014年)は3万6,414事業所(単独事業所2万6,003、本社4,076、支社6,335:単独事業所+本社=3万0,079社)、従業員総数は102万5,703人、事業従事者数は103万7,011人(うち本業の従事者91万0,327人)、売上高は20兆9,664億16百万円(うち本業の売上高は16兆5,223億63百万円)だった。

 2016年の事業所数は1.4%減(単独事業所5.1%減、本社6.6%増、支社8.9%増)、従業員数は0.6%減、事業従事者数は0.6%減(うち本業の従事者は1.0%減)、売上高は1.9%増(うち本業の売上高は2.3%増)となる。

 単独事業所と本社を合わせた企業数は3.6%減、1社当たり従業員数は34.8人で2.1%増、事業従事者数は35.5人で3.0%増(うち本業の従事者は31.1人で2.7%増)、1社当たり売上高は7億3,662.3万円で5.7%増(うち本業の売上高は5億8,239.5万円で6.0%増)だった。

 事業所、事業従事者の増減を勘案した売上高前年比を計算すると、1事業所当たり売上高は5億9,504.6万円で3.3%増(うち本業務の売上高は4億7,046.1万円で3.7%増)、事業従事者1人当たり売上高は2,116.0万円で3.5%増(うち本業務の売上高は1,874.1万円で3.3%増)だった。

 

【営業費用】 特サビの特徴は、売上高ばかりでなく営業費用を調べていること。売上高から営業費用を差し引くと売上高総利益が算出できる。

 「ソフトウェア」の2015年営業費用は前年比2.4%増の11兆6,834億55百万円で、売上高総利益率は10.0%だった。2014年から0.37ポイント増加した。

 「情報処理・情報提供サービス」の2015年営業費用は前年比0.3%減の6兆0,487億31百万円で、売上高総利益率は10.7%だった。2014年から0.88ポイント増加した。

 「インターネット附随サービス」の2015年営業費用は前年比2.7%増の1兆2,016億64百万円で、売上高総利益率は25.8%だった。2014年から0.18ポイント減少した。

 IT関連3業種の2015年営業費用総額は前年比1.5%増の18兆9,338億50百万円で、売上高総利益率は11.4%だった。2014年から0.34ポイント増加した。

 

【動態統計】 ちなみに「特定サービス産業動態統計」の2015年1~12月集計値は、集計事業所数は2014年比3.2%減の2,532、従業員数は1.7%減の33万0,480人(技術系:1.6%減の24万6,783人、その他:2.0%減の8万3,697人)、他企業からの派遣受入数は8.6%増の1,035万0,308人日(240日で除すと4万3,126人に相当)、従業員数と派遣受入数を合算した事業従事者数は0.6%減の37万3,606人、 売上高は1.5%増の10兆7,967億54百万円だった。

 実態調査に対するカバー率を見ると、事業所数は7.05%、従業員数は32.7%、事業従事者数は36.3%、売上高は50.5%となる。1社当たり従業員数が130.52人と実態調査の3.75倍となっており、取引の上位に位置する企業のウエイトが高いことが分かる。

 集計事業所数が3.2%減となっているため、1事業所当たりに換算して前年比を出す必要がある。従業員数は1.6%増の131人(技術系:1.7%増の97.5人、その他:1.2%増の33.1人)、他企業からの派遣受入数は12.2%増の4087.8人日(240日で除すと年17人に相当)、従業員数と派遣受入数を合算した事業従事者数は2.7%増の147.6人、 売上高は4.9%増の42億64百万円だった。

 特サビ実態調査の対前年増減率を見ると、従業員数は実態調査0.6%減/動態統計1.6%増、事業従事者数は実態調査0.6%減/動態統計2.7%増、売上高は実態調査1.9%増/動態統計4.9%増となっている。

(1)取引ポジション上位企業が派遣受入数を拡大することで売上高を増やしている

(2)従業員(ないし事業従事者)数が売上高の増減につながるマンパワー依存型から脱皮できていない

(3)取引ポジション上位の売上高増加率は業界全体の実質増加率の2.6倍であって、上位企業の状況だけ見ていると景況判断を間違う可能性が高い

 等のことが指摘できる。