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IT産業調査室

IT/ICT産業の業績や就労環境などを調査し分析しています

3月期決算の上場IT企業341社 2019年3月末通期見通し

売上高前年比6.1%増から4.9ポイントの減速

3月期決算の上場IT企業341社が、2018年度第3四半期決算と併せて2019年3月末通期業績見通しを発表した。単純集計の売上高は115兆9,779億50百万円で対2018年3月末実績増減比は1.2%だった。営業利益は11兆2,712億17百万円で6.6%増、経常利益は10兆9,616億45百万円で1.5%減、純利益は8兆4,382億60百万円で4.9%増となっている。

年度決算と同時に公表される次年度の通期業績見通しは、従業員の引き締めを図るねらいもあって、慎重な数字が出やすい。対して第3四半期決算時は通期決算の直前であるため、実態に近づく傾向がある。

2018年3月末通期業績の前年同期比増減率と比べると、売上高:6.1%増→1.2%増(4.9ポイント低下)、営業利益:11.3%増→6.6%増(4.7ポイント低下)、経常利益:17.8%増→1.5%減(19.3ポイント低下)、純利益:61.7%増→4.9%増(56.8ポイント低下)となっており、景況減速の見通しが示された。

ただしソフトバンクグループ【証券番号9984】、キーエンス【6861】、ヤフー【4689】、トランスコスモス【9715】など16社が通期見通しを公表しておらず、最終的にはこの数値より1〜2ポイント上回る可能性がある。

受託系(88社)はほぼ横ばいだが利益率は改善

受託系で通期見通しを公表していないのは、「BSD」(業務ソフトウェア開発)48社のうち1社(イメージ情報開発)、「ESD」(エンベデッド・システム開発)11社のうち2社(ソフィアホールディングスソフトフロントホールディングス)、「BPO・コールセンター」4社のうち1社(トランスコスモス)だった。したがって集計対象は92社のところ、通期見通しは88社で集計することになる。

売上高は6兆4,069億69百万円で2018年3月実績比2.8%増だった。営業利益は5,498億68百万円で9.5%増、経常利益は5,551億58百万円で8.6増、純利益は3,741億97百万円で10.4%増だった。

就業者1人当たりに換算すると、売上高は1,758.9万円で0.1%増とほぼ横ばい、営業利益は150.9万円で6.6%増、経常利益は152.3万円で5.7%増、純利益は102.7万円で7.6%増となる。

経営指標を見ると、営業利益率は8.6%で2018年実績より0.5ポイント増加、純利益率も5.4%で0.4ポイント増加するとしている。

ネット系(96社)は2期連続で減益の見通し

ネット系で通期見通しを公表していないのは、「BPO」のモーニングスター【4765】、「通販」のクルーズ【2138】、「アミューズメント(ネットゲーム)」のアカツキ【3932】、ガーラ【4777】、「総合ポータル」のヤフー【4689】の5社だった。このため、対象101社のうち96社で集計した。

売上高は3兆6,515億21百万円で4.5%増、営業利益は5,060億98百万円で5.4%減、経常利益は5,156億66百万円で5.2%減、純利益は3,352億77百万円で6.8%減だった。

就業者総数が1,100人増加しているため、就業者1人当たりの売上高は4031.5万円で3.3%増に低下、営業利益は458.8万円で22.5%減、経常利益は569.3万円で6.3%減、純利益は370.2万円で8.0%減と減少幅が拡大する。

96社の2018年実績(企業ベース)と比較すると、売上高が9.1%増から4.6ポイント低下、営業利益は8.6ポイント、経常利益は10.4ポイント、純利益は5.2ポイント、それぞれ低下することになる。

2018年実績で8,971億85百万円(全体の23.8%)と、ネットサービス業の牽引役であるヤフー次第とはいえ、ネットサービス業の”快進撃”にブレーキがかかるかもしれない。

販売系(74社)は増収増益

 販売系で通期見通しを公表していないのは「ソフトウェア・ライセンス販売(ソフトパッケージ販売)」のフーバーブレイン【3927】1社だった。このため集計は本来の75社から1社減の74社で行った。

売上高は5兆0,377億80百万円で5.8%増、営業利益は5,484億76億円で13.1%増、経常利益は5,584億70百万円で8.8%増、純利益は3,803億32百万円で6.2%増だった。

就業者1人当たり業績は、売上高が4,223.7万円で4.5%増、営業利益が359.8万円で12.6%減、経常利益が468.2万円で7.5%増、純利益が318.9万円で4.8%増となる。 

ハード製造系(73社)は減収の可能性

ハードウェア製造系で通期見通しを公表していないのは「周辺機器」のジャパンディスプレイ【6740】、メルコホールディングス【6676】、「電子部品」のキーエンス【6861】の3社だった。対象は76社だが、通期見通しは73社で集計する。

売上高は75兆7,583億30百万円で0.5%増、営業利益は5兆3,486億06百万円で8.9%増、経常利益は5兆0,043億51百万円で3.7%減、純利益は4兆7,942億44百万円で13.5%増だった。

就業者1人当たり業績は、売上高が2,637.2万円で0.2%減、経常利益が188.7万円で8.2%増、経常利益が176.5万円で4.3%減、純利益が169.1万円で12.8%増となる。

企業ベースも就業者1人当たりも増収増益だが、企業ベース売上高の20%超を占め、かつ取引ポジションの上位に立つ「総合情報機器」(富士通NEC日立製作所)の売上高が1.1%減と3期連続で前年同期実績を割り込む影響が懸念される。