5月20日までに3月期上場ネット系ITサービス業の2018年度(2019年3月期)決算が出そろった。受託系ITサービス業がITシステムの構築・運用に軸足を置いているのに対し、ネット系はITを利活用した既存ビジネスの代替、ITとインターネットを組み合わせた新しいビジネスモデルの創出と理解していい。
【集計企業数の増減】
集計の対象企業は1社増の104社だった。
▶︎新規上場 カオナビ(上場市場マザーズ:証券番号4435:上場日2019年3月15日)、ミンカブ・ジ・インフォノイド(マザーズ:4436:2019年3月19日)、gooddaysホールディングス(マザーズ:4437:2019年3月25日)の3社だった。
▶︎上場廃止 D.A.コンソーシアムホールディングス(JASDAQスタンダード:6534:2018年10月25日)、エキサイト(JASDAQスタンダード:3754:2018年11月27日)の2社だった。
▶︎業態変化 ソフトバンク・テクノロジー(東証1部:4726)を受託系から移動、FRACTALE(旧セブンシーズホールディングス、東証2部)を除外した。
これに伴って業態別企業数は次のようになった。
①ASP:17社 ②営業支援・マーケティング:17社 ③業務代行・BPO:15社 ④コンテンツ配信:13社 ⑤ECサイト:9社 ⑥出版・ニュースサイト:9社 ⑦求人・求職:8社 ⑧広告・アフリエイト:6社 ⑨オンラインゲーム:6社 ⑩ポータル・複合サイト:4社
【104社の業績】
売上高は前年同期比8.2%増の3兆8,472億98百万円だった。就業者数が4,273人増の9万5,143人(正規雇用7万0,204人、非正規雇用2万4,939人)だったので、就業者1人当たり売上高を算出すると、4,043.7万円で実質増減率は3.4%増となる。
営業利益は12.2%減の4,765億04百万円だった。1人当たりは500.8万円なので、実質増減率は16.1%減となる。
経常利益は16.0%減の4,675億11百万円だった。1人当たりは491.4万円なので、実質増減率は19.8%減となる。
当期純利益は18.9%減の2,977億62百万円だった。1人当たりは313.0万円なので、実質増減率は22.5%減となる。
【業態別の業績】
①ASP:17社 増収減益
売上高は931億63百万円で、前年同期比増減率は14.2%増だった。就業者1人当たり売上高は2297.5万円で、実質増減率は2.5%増だった。企業ベースと1人当たりの前年同期比に大きな乖離があるのは、就業者数が増加したことによる。
営業利益は61億34百万円で36.3%減、売上高に対する営業利益の割合は6.6%で2017年度から5.2ポイント低下した。1人当たりは151.3万円で、実質増減率は42.8%減だった。
経常利益は59億77百万円で37.5%減だった。1人当たりは147.4万円で、実質増減率は43.9%減だった。
当期純利益は32億63百万円で49.0%減、純利益率は3.5%で2017年度から1.4ポイント低下した。1人当たりは80.5万円で、実質増減率は54.3%減だった。リミックスポイント(3825)の赤字18億12百万円が全体を引き下げた。
②営業支援・マーケティング:17社 増収減益
売上高は3,142億85百万円で、前年同期比増減率は34.4%増だった。就業者1人当たり売上高は2,327.3万円で、実質増減率は21.2%増だった。
営業利益は674億25百万円で5.6%増、売上高に対する営業利益の割合は6.6%で2017年度から1.3ポイント低下した。1人当たりは499.3万円で、実質増減率は4.7%減だった。
経常利益は672億30百万円で5.2%増だった。1人当たりは497.9万円で、実質増減率は5.1%減だった。
当期純利益は435億69百万円で0.1%増、純利益率は13.9%で2017年度から1.9ポイント低下した。1人当たりは322.6万円で、実質増減率は9.6%減だった。17社のうち9社が2017年度より純利益を落としている。
③業務代行・BPO:15社 増収増益
売上高は3,136億80百万円で、前年同期比増減率は7.2%増だった。就業者1人当たりは3,820.9万円で、実質増減率は2.9%減だった。
営業利益は258億13百万円で50.9%増、売上高に対する営業利益の割合は8.2%で2017年度から2.4ポイント上昇した。1人当たりは314.4万円で、実質増減率は36.7%増だった。
経常利益は245億59百万円で34.4%増だった。1人当たりは299.2万円で、実質増減率は21.7%増だった。
当期純利益は161億88百万円で23.9%増、純利益率は5.2%で2017年度から0.7ポイント上昇した。1人当たりは197.2万円で、実質増減率は12.2%増だった。この分類で売上高が最多のインターネットイニシアティブ(3774)が純利益を46.8%減と落としたものの、デジタルガレージ(4819)の純利益倍増(2.3倍)が全体を押し上げた。
④コンテンツ配信:13社 減収減益
売上高は1,001億96百万円で、前年同期比増減率は1.1%増だった。就業者1人当たり売上高は3,163.8万円で、実質増減率は0.9%減だった。
営業利益は91億40百万円で18.6%減、売上高に対する営業利益の割合は9.1%で2017年度から2.2ポイント上昇した。就業者1人当たり営業利益は288.6万円で、実質増減率は18.7%減だった。
経常利益は78億48百万円で29.8%減だった。就業者1人当たり経常利益は247.8万円で、実質増減率は29.9%減だった。
当期純利益は17億72百万円で73.7%減、純利益率は1.8%で2017年度から5.0ポイント低下した。就業者1人当たりは56.0万円で、実質増減率は73.7%減だった。エムアップ(3661)、ドリコム(3793)、アイフリークモバイル(3845)の赤字が影響した。
⑤ECサイト:9社 増収減益
売上高は4,782億68百万円で、前年同期比増減率は18.9%増だった。1人当たりは7,488.1万円で、実質増減率は10.3%増だった。
営業利益は297億56百万円で22.9%減、売上高に対する営業利益の割合は6.2%で2017年度から3.4ポイント低下した。1人当たりは465.9万円で、実質増減率は28.5%減だった。
経常利益は297億72百万円で22.9%減だった。1人当たりは466.1万円で、実質増減率は28.4%減だった。
当期純利益は183億09百万円で22.0%減、純利益率は3.8%で2017年度から2.0ポイント低下した。1人当たり純利益は286.7万円で、実質増減率は27.7%減だった。クルーズ(2138)、ベガコーポレーション(3542)、夢展望(3185)の赤字が影響した。
⑥出版・ニュースサイト:9社 増収減益
売上高は3,469億37百万円で、前年同期比増減率は3.3%増だった。就業者1人当たり売上高は3,181.7万円で、実質増減率は3.6%増だった。
営業利益は128億69百万円で18.6%増、売上高に対する営業利益の割合は3.7%で2017年度から0.5ポイント上昇した。1人当たりは118.0万円で、実質増減率は18.9%増だった。
経常利益は148億69百万円で28.7%増だった。1人当たりは136.4万円で、実質増減率は29.1%増だった。
当期純利益は28億30百万円で41.4%減、純利益率は0.8%で2017年度から0.6ポイント低下した。1人当たりは26.0万円で、実質増減率は41.3%減だった。カドカワ(9468)が40億85百万円の赤字となったことが影響した。
⑦求人・求職:8社 増収増益
売上高は945億51百万円で、前年同期比増減率は17.0%増だった。1人当たりは1560.0万円で、実質増減率は2.4%増だった。
営業利益は194億34百万円で21.1%増、売上高に対する営業利益の割合は20.6%で2017年度から0.7ポイント上昇した。1人当たりは320.6万円で、実質増減率は6.0%増だった。
経常利益は210億29百万円で21.9%増だった。1人当たりは347.0万円で、実質増減率は6.7%増だった。
当期純利益は144億45百万円で31.1%増、純利益率は15.3%で2017年度から1.6ポイント上昇した。1人当たりは238.3万円で、実質増減率は14.7%増だった。産業界の人材不足を背景に、有資格者・経験者の求人・求職マッチング需要がある。
⑧広告・アフリエイト:6社 増収増益
売上高は1,118億42百万円で、前年同期比増減率は19.0%増だった。1人当たりは4,964.1万円で、実質増減率は9.6%増だった。
営業利益は129億49百万円で243.5%増(3.4倍)、営業利益率は9.1%で2017年度から2.2ポイント低下した。1人当たりは574.7万円で、実質増減率は216.5%増(3.2倍)だった。
経常利益は130億73百万円で231.0%増(3.3倍)だった。1人当たりは580.2万円で、実質増減率は205.0%増(3.1倍)だった。
当期純利益は83億16百万円で303.1%増(4.0倍)、純利益率は7.4%で2017年度から5.2ポイント上昇した。1人当たりは369.1万円で、実質増減率は271.4%増(3.7倍)だった。メルカリ(マザーズ:3485:6月決算)の株式上場に伴って、ユナイテッド(2497)が70億08百万円の黒字を計上したことが影響した。
⑨オンラインゲーム:6社 減収減益
売上高は1兆0,306億29百万円で、前年同期比増減率は0.0%(0.02)%減だった。1人当たりは4,579.1万円で、実質増減率は1.9%減だった。
営業利益は1,518億34百万円で17.9%減、営業利益率は14.7%で2017年度から3.2ポイント低下した。1人当たりは674.7万円で、実質増減率は19.5%減だった。
経常利益は1,591億66百万円で15.5%減だった。1人当たりは707.3万円で、実質増減率は17.2%減だった。
当期純利益は1,099億81百万円で11.6%減、純利益率は10.7%で2017年度から1.4ポイント低下した。1人当たりは488.7万円で、実質増減率は13.3%減だった。ミクシィ(2121)、DeNA(デー・エヌ・エー)(2432)の2社が純利益を大きく減らしたのが響いている。
⑩ポータル・複合サイト:4社 増収減益
売上高は9637億47百万円で、前年同期比増減率は6.5%増だった。1人当たりは5350.0万円で、実質増減率は7.3%増だった。
営業利益は1411億50百万円で24.3%減、営業利益率は14.6%で2017年度から6.0ポイント低下した。1人当たりは783.6万円で、実質増減率は23.7%減だった。
経常利益は1591億66百万円で15.5%減だった。1人当たりは688.3万円で、実質増減率は35.6%減だった。
当期純利益は790億89百万円で39.9%減、純利益率は8.2%で2017年度から6.3ポイント低下した。1人当たりは439.0万円で、実質増減率は39.5%減だった。ヤフー(4689)の純利益が40.0%減(2017年比524億76百万円減)となったのが響いている。