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IT産業調査室

IT/ICT産業の業績や就労環境などを調査し分析しています

JUAS「企業IT動向調査2020」速報値(第1弾) IT予算「ちょっと減る」では済みそうにない

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が「企業IT動向調査2020」速報板を公表した。以前は記者会見または一般向け説明会に報道関係者を招いてくれたのだが、少なくとも筆者にそのような案内はなかった。それで記事にするのが遅くなった——と、恨み節を兼ねた言い訳を述べさせていただいたうえで、速報の概要を紹介しよう。

「減少するが増加/高水準」って何なんだ?

Webで「企業IT動向調査2020」を検索すると、

▶️2020年度のIT予算、回答企業の4割が増加を見込む─JUAS「企業IT動向調査2020」速報値(IT Leaders)

▶️国内有力企業のIT予算、注力ジャンルは「業務プロセスの効率化」が断トツの1位【日本情報システムユーザー協会調べ】インプレスWeb担当者フォーラム)

▶️IT予算は減少も高水準を維持、JUASが「企業IT動向調査2020」速報値」(日経xTECH/日経コンピュータ

▶️【速報】「企業IT動向調査2020」の速報値を発表 JUAS」(サイバーNavi)

の4件が出てくる(JUASホームページを除く)。見出しを総合すると、①国内大手企業の2020年度IT予算は2019年度から減少する、②いちばんに注力するのは「業務プロセスの改善」の2点に集約される。「減少するが4割は増加」「減少するが高水準」はITの重要性を意識した表現だろうが、読者を混乱させてしまうかもしれない。

そこで読者にあっては、JUASのホームページ(https://juas.or.jp/)から『企業IT動向調査2020』のPDFを参照してもらうのが手っ取り早い。上記の4記事は1月21日付の同調査第1弾で書いたもので、第2弾(2月3日付)、第3弾(2月17日付)は反映されていない。

しかし「速報」をもってヨシとするメディアを責めるのは無理がある。むしろ情報を小出しにし、この先何回に分けてレポートするのか明言しないJUASの広報姿勢こそ問題と言わなければならない。実際、筆者にしても第4弾、第5弾があるかどうか分からずに書いている。

間違いではないようだが根拠もなさそう

1月21日付の概要を見ると、たしかに回答企業の4割が「2020年度のIT予算は2019年度より増える(だろう)」と回答している。IT Leadersの見出しは間違いではない。

「10%以上増加」15.4%、「10%未満増加」25.3%の合計40.7%から、「10%以上減少」5.4%、「10%未満減少」7.8%の合計13.2%を引いたDI値は27.5ポイントだ。2019年度のDI値は37.4ポイントだったので、19.9ポイント/26.5%の減少となる。日経xTECH/日経コンピュータの見出しも間違いではない。 

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2020年度IT予算(予想)の増減:上は全体、下は売上高規模別

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参考 2019年度IT予算(予想)の増減:JUAS「企業IT動向調査2019」

ところが売上高規模別の増減を見ると、別の景色が見えてくる。

売上高規模別のDI値と2019年増減率は下記のようだ。

 100億円未満        :21.1/41.0%減

 100億円以上〜1000億円未満:27.3/25.6%減

 1000億円以上〜1兆円未満  :37.4/  9.9%減

 1兆円以上          :24.6/21.4%減

売上高100億円未満の企業のIT予算が大幅に減少する。100億円〜1000億円未満の企業、1兆円以上の企業が2割以上の減少、1000億円〜1兆円未満の企業がからくも1割減にとどまる。日経xTECH/日経コンピュータが何を根拠に「高水準」の見出しを打ったのか(売上高に占めるIT予算の構成比をJUASが示しているなら別だが)、よく分からない。

売上高規模別の重み付けで算出する

メディアへのいちゃもんはこのくらいにして、留意すべきは、①「変わらない」の構成比、②売上高規模に応じるIT予算の総額——の2点である。

売上高規模別の「変わらない」は

 100億円未満       :46.0%→59.3% △13.3ポイント/28.9%増

 100億円以上〜1000億円未満:45.4%→45.2% ▲0.2ポイント/  0.4%減

 1000億円以上〜1兆円未満  :32.7%→32.3% ▲0.4ポイント/  1.2%減

 1兆円以上          :37.5%→40.4% △2.9ポイント/  7.7%増

となっている。売上高100億円未満の企業は2019年度に44.9%がIT予算を増加させており、2020年度もその金額を維持する、とも読める。1兆円以上の企業も2019年度に46.9%が「増加」と答え、2020年度は「横ばい」が2.9ポイント増えている。つまり「高止まり」だ。

100億円未満の企業について、JUASが「企業業績の先行きにいち早く反応している」とコメントしている。売上高の先行き不明感が高まっているのでIT予算を引き締める、という意味だろう。さて、その根拠は公表資料のどこに示されているだろうか。

もう一つ、売上高100億円未満と1兆円以上の企業では、IT予算の絶対額が違う。1兆は100億の100倍なので、売上高1兆円の企業がIT予算を1%減らすだけで全体に影響する。反対に売上高100億円未満の企業がIT予算を10%増やしても、全体には微塵の影響もない。

1兆円以上の企業について2019年度と比較すると、「10%以上増やす(増えるだろう)」は6.3%から14.0%に7.3ポイント増、「10%未満増やす(増えるだろう)」は40.6%から28.1%に12.5ポイント減、「10%以上減らす(減るだろう)」は9.4%から10.5%に1.1ポイント増、「10%未満減らす(減るだろう)」は6.3%から7.0%に0.3ポイント増となっている。加重計算すると、IT予算を減らす企業のウエイトは実質的に14.6-28.1-2.2-0.3=16.0となる。

同様の計算をすると、

 100億円未満       :IT予算を減らす企業のウエイト20.8

 100億円以上1000億円未満:IT予算を減らす企業のウエイト18.8

 1000億円以上1兆円未満 :IT予算を減らす企業のウエイト8.7

 1兆円以上       :IT予算を減らす企業のウエイト16.0

1兆円以上の企業を1社1、1000億円以上1兆円未満を0.3、100億円以上1000億円未満を0.1、100億円未満を0.03とすると、16.0+2.6+1.9+0.6=21.1だ。

より厳密には企業数を乗じてポイント化して計算するのがいいのだが、そのような計算をしたところで概数の域を出ることはない。ざっくり言って、2020年度のIT予算はちょっと減る程度ではなさそうだ。

 

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