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IT産業調査室

IT/ICT産業の業績や就労環境などを調査し分析しています

グラフは語る(5-1) 従業員の平均年収 情報処理系SI業

 受託系ソフト/サービス業の頂点に位置している情報処理系SI事業者における従業員の平均年収について、2013年から10年間の推移をグラフにしました。有価証券報告書記載「従業員について」から、平均年齢、平均勤続年数、平均年収を収録したものですが、対象となるのは単独・個別の正規雇用者です。

 情報処理系SI事業者の2023年従業員は、単独・連結の総従業員数が34万7178人(正規雇用31万2,258人、非正規雇用3万4,920人)、単独・個別の従業員数が7万8,504人(正規雇用6万8,763人、非正規雇用9,741人)でした。つまりここで示すのは、全体の19.8%について、でしかありません。

 またここでいう平均年収は各社公表の数値を単純に合計し、集計企業数で割った単純平均ではありません。各社公表の数値に単独。個別正規雇用者数を掛け、その合計を単独・個別正規雇用者総数で割っています。

 一見すると「単純平均と同じではないか」と思われがちですが、A社は平均年収1000万円の正規雇用者が10人、B社は平均年収500万円の正規雇用者が100人だったら……を考えてください。2社の平均年収合計は1500万円なので単純平均は750万円ですが、従業員110人が受け取る年収総額は6億円、それを110で割ると545.45万円となります。そのような計算を全社に適用しました。

 2013年の平均年収は733.3万円でした。

 2017年に一度減少しましたが、以後は順調に増え続け、2023年は2013年比15.3%(112.4万円)増の845.7万円でした(棒グラフ)。

 世の中全体の給与水準が上昇していない(というか停滞していた)なかで、10年間100万円超の昇給なので、情報処理系SIは順風満帆だったことになります。

 しかしこれは単独・個別(親会社)の正規雇用者に限っての数字です。従業員の規模が大きくなればなるほどグループ内取引(グループ内多重下請け構造)が深化しますので、非正規雇用者を含む連結従業員の給与は親会社正規雇用者の6〜7割に減衰すると推定されます。

1人あたり売上高から読み取るグループ内多重取引構造

 単独・個別の1人あたり売上高(折線:黒)が2013年4,052万円、2023年は2013年比22.5%増の4,964万円なので、平均年収の伸びは納得できそうです。ただ、「従業員(頭数)の増加=売上高の増加」という方程式、「しかし売上高の伸びは従業員の伸びを上回らない」という実際を勘案すると、平均年収の伸びが単独・個別の正規雇用者数(折線:赤)の伸びを上回っているのが気になります。

 折線:水色は単独・連結1社あたり従業員数(正規雇用+非正規雇用)の増減推移、折線・緑は単独・連結1人あたり売上高の増減推移を示しています。2017年に単独・連結1人あたり売上高が大きく落ち込んだのは単独・連結1社あたり従業員数が大幅に増加したことに起因していますが、そういう状況にもかかわらず、単独・個別正規雇用者の平均年収は続伸しています。

 グラフは語る(4-9)で触れた「情報処理系SI事業者のトップグループでは、グループ内多重下請け構造が形成されているのではないか」という疑いは、この集計結果からも側面補強されます。連結子会社従業員が親会社に売上高、営業利益を上納し、親会社の正規雇用社員がその配分に預かっている、というわけです。