新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による世界規模での経済縮退が懸念されるなか、国内IT/ICT関連企業の業績にどのような影響が出ているか、3月期決算企業の2020年度第1四半期(2020年4~6月期)決算を集計した。
対象は363社で、内訳は法人間取引(B―B)が中心の受託型が145社(人月モデル102社、サービスモデル43社)、製品販売型が74社、ネット型が56社(B―B―C50社、B―C6社)、ハードウェア製造業が77社、通信インフラを担う通信サービスが8社、ネット構築が3社となっている。
▶️総売上高は前年同期比▲11.1%/通期見通しは▲5.1%
363社の2020年度第1四半期業績は、売上高が22兆0,895億35百万円で前年同期比は▲11.1%だった。本業の利益を示す営業利益は2兆3,742億99百万円で▲34.3%、営業外損益を合わせた経常利益は2兆8,399億61百万円で▲20.6%、純利益は2兆5,544億72百万円で△8.0%だった。(△はプラス、▲はマイナス)
通期見通しの売上高は101兆0,395億47百万円で前年度比▲5.1%だった。営業利益は5兆8,893億88百万円で▲17.8%、経常利益は7兆6,502億65百万円で▲3.4%、純利益は3兆9,851億06百万円で▲11.1%となっている。
▶️縮退が表面化するのはこれから
8月17日に内閣府が発表した今年4~6月のGDP▲27.8%に対して、IT/ICT関連株式公開企業の売上高減少比率は半分以下にとどまっている。
セグメント別の動向を見ると、ハードウェア製造業は海外生産拠点の操業停止、需要の低迷をダイレクトに受けている。売上高は▲15.2%、営業利益は▲42.9%と6セグメントのうち最大の落ち込みだった。
製品販売業は売上高は▲6.4%だったが、営業利益は△11.1%となった。売上高の落ち込みはハードウェア製造業に次ぐものの、法人の新年度予算執行は7月以後なので、中間期業績は落ち込みが拡大すると見られる。
受託型の場合、法人間取引は中長期(3~6か月)契約に基づくケースが少なくない。このため、産業界のIT/ICT需要の縮退が顕在化していない(実質的な2020年度契約となる6月以後の動向を反映していない)ものと考えていい。
▶️外出自粛/ニューノーマルの追い風も
B—Cモデル(オンラインゲーム)、受託型B—B—C(エンタテインメント配信、求人・求職、電子出版・ニュース配信など)、製品販売のうちパッケージ型ゲーム販売は接触回避のニューノーマル需要を反映して、売上高は大きく落ち込んでいない(企業個別の増減は別)。
B―Bのうち人月モデルの売上高は△0.7%と増加した。しかし接触回避の動きを背景に、法人のIT/ICT需要は受託型人月モデルから、ネット利用のサービスモデルに移行していくことが考えられる。