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IT産業調査室

IT/ICT産業の業績や就労環境などを調査し分析しています

株式公開IT企業(3月期)2019年度中間業績377社 退潮の前兆か

電子機器・部品製造業を含むIT/ICT関連3月期上場企業の2019年度上期(2019年4〜9月)業績を集計しました。併せて、決算短信に基づく2020年度通期見通し、連結/単独の就業員数(正規、非正規)、平均年齢、平均年収も調べたので、時間がかかりました。

集計対象は5社増の376社

集計対象は376社でした。

内訳は、「インフラ」14社、「ハードウェア製造」81社、「製品販売」81社、「ネットサービス」109社、「受託サービス」92社でした。

2018年10月以後の上場廃止が5社、2019年に入って新規に上場した企業が11社あったので、集計対象企業数は前年同期から6社増えています。また中間決算遅延が1社あるため、実質的な集計対象企業は5社増でした。

上場廃止4社、決算遅延1社、新規上場11社は以下のようになっています(カッコ内は証券番号、上場市場、上場廃止・新規上場の月日)。

◼️ 上場廃止

エキサイト(3754、ジャスダックスタンダード、2018年11月27日)

イオニア(6773、東証1部、3月27日)

JIEC(4291、東証2部、4月18日)

ベリサーブ(3724、東証2部、4月18日)

エヌ・デーソフトウェア(3794、東証2部、6月18日)

◼️ 決算遅延

ユー・エム・シー・エレクトロニクス(6615、東証1部)

◼️ 新規上場

カオナビ(4435、マザーズ、3月15日)

ミンカブ・ジ・インフォノイド(4436、マザーズ、3月16日)

ギークス(7060、マザーズ、3月20日)

gooddaysホールディングス(4437、マザーズ、3月25日)

バルテス(4442、マザーズ、5月30日)

ブランディングテクノロジー(7067、マザーズ、6月21日)

インフォネット(4444、マザーズ、6月25日)

 *以下の3社は上場が決定し、かつ2019年度上半期業績が判明している。

JMDC(4483、マザーズ、12月16日)

ランサーズ(4484、マザーズ、12月16日)

JTOWER(4485、マザーズ、12月18日)

 

純利益は3分の2に減少

376社の2019年4~9月の売上高は62兆6,896億17百万円で、前年同期比は1.2%減でした。

営業利益は5兆9,343億68百万円で22.6%減、経常利益は6兆9,564億25百万円で14.4%減、純利益は4兆1,340億78百万円で33.9%減でした。営業利益率は9.5%で▲2.7ポイント、純利益率は6.6%で▲3.4ポイントでした。 

《1社当たり売上高は0.4%減》

新規上場11社については、新規公開株式目論見書、新規上場に伴う決算報告書などを参照し、2018年度の就業員数、勤続年数、平均年齢、平均年収、業績4項目を調査しました。従って2018年度中間業績の集計対象企業は382社となっています。

そこで2018年度中間決算から上場廃止、決算遅延の5社を除外した377社で比較することにします(2019年度中間期の売上高、営業利益、経常利益、純利益は変動しません)。

前年同期比は売上高が0.4%減、営業利益が22.7%減、経常利益が14.4%減、純利益が34.0%減でした。2018年度中間期と2019年度中間期をまったく同じ企業で比較していますので、これが実際の増減率となります。東京オリンピックパラリンピック後の景気後退「POST2020年」の懸念が指摘されるなか、IT/ICT産業にその前兆が現れたと見ることができるかもしれません。

1社当たりに補正すると、売上高は1,662億85百万円、営業利益は157億41百万円、経常利益は184億52百万円、純利益は109億66百万円でした。

就業者1人当たりで比較する

企業ベースの業績集計は、M&Aや就業者の増減に左右されがちです。そこで業態・主業務別の動向は企業ベースで、業績の推移は非正規雇用者を含む就業者1人当たりで見ることとします。また本業の収益を見るため、本調査では営業利益と営業利益率を採用することとします。 

◼️ 就業者総数は0.9%増の413万人

377社の就業者総数は、前年同期比0.9%増の413万2,472人でした。内訳は正規雇用が1.0%増の371万2,426人、非正規雇用が0.2%減の42万0,046人となっています。

平均勤続年数、平均年齢、平均年収(給与)を算出するベースとなる単独・個別の就業者数は、2.6%増の76万9,893人でした。 

◼️ 売上高 2半期連続で減少

正規雇用者を含む就業者1人当たり業績は、売上高が前年同期比2.0%減の1,517.0万円、営業利益が23.5%減の143.6万円、経常利益が15.4%減の168.3万円、純利益が34.8%減の100.1万円でした。 2018年度下期(2018年10月~2019年3月)から2半期連続で売上高が前年同期を下回ったことになります。 

◼️ 通期純利益予想 前年度比14.0%減

377社の2019年度通期業績予想を見ると、売上高は130兆2,455億62百万円で0.4%減、営業利益は13兆9,040億72百万円で1.7%減、経常利益は13兆2,188億74百万円で3.4%減、純利益は8兆8,982億20百万円で14.4%減でした。

1社当たりに換算すると、売上高は3,454億79百万円、営業利益は368億81百万円、経常利益は350億63百万円、純利益は236億03百万円となります。

377社の2019年度通期業績予想について、今年3月末(2018年度決算発表時)と9月末(今中間期)を比較すると、売上高は1兆8,920億01百万円(1.4%)の下方修正となりました。同様に、営業利益は3,040億45百万円(2.1%)、経常利益は3,854億57百万円(2.8%)、純利益は3,667億94百万円(4.0%)、それぞれ下方修正したことになります。 

◼️ 3半期連続の減収がほぼ確定

2019年度通期業績予想を就業者1人当たりに補正すると、売上高は3151.7万円で1.5%減、営業利益は336.5万円で2.8%減、経常利益は319.9万円で4.5%減、純利益は215.3万円で15.4%減となりました。2018年度下期、2019年度上期、同下期と3半期連続の減収減益がほぼ確定しました。

5つの業態で整理すると……

本調査では、対象企業の主業務で「インフラ」「ハードウェア製造」「製品販売」「ネットサービス」「受託サービス」の5業態に整理しています。また、これとは別に収益モデルで「B2B」「B2B2C」「B2C」の3形態による分類も用意しました。業態別の業績は次のようでした(見出しの業績動向は就業者1人当たり業績です)。 

◼️ インフラ14社 減収減益

インフラ14社は「通信サービス」9社、「持株会社」2社、「通信建設」3社で構成されます。

売上高は17兆9,372億15百万円で前年同期比は1.9%増でした。営業利益は2兆5,454億89百万円(営業利益率14.2%)で38.6%減、経常利益は3兆6,734億05百万円で10.7%減、純利益は2兆0,104億12百万円(純利益率11.2%)で18.7%減でした。

就業者1人当たりの売上高は0.3%減の2,698.4万円、営業利益は39.8%減の382.9万円、経常利益は12.6%減の552.6万円、純利益は20.4%減の302.4万円でした。

◼️ ハードウェア製造81社 減収減益

ハードウェア製造81社は「娯楽機器・装置」10社。「情報処理機器・装置」3社、「電子部品」27社、「周辺機器・装置」41社で構成されます。

売上高は36兆8042億49百万円で前年同期比は2.7%減でした。営業利益は2兆6,580億48百万円(営業利益率7.3%)で7.4%減、経常利益は2兆5,364億37百万円で23.7%減、純利益は1兆6,120億61百万円(純利益率4.4%)で51.7%減でした。

就業者1人当たりの売上高は3.3%減の1,309.0万円、営業利益は7.9%減の94.5万円、経常利益は24.2%減の90.2万円、純利益は52.0%減の57.3万円でした。

ハードウェア製造業の純利益が半減まで落ち込んだのは、2008年度上半期(2008年4〜9月)以来となります。

◼️ 製品販売81社 増収増益

製品販売81社は「モバイル通信機器販売」4社、「ゲームソフトパッケージ」7社、「ターンキー(システム販売)」15社、 「ソフトウェア・ライセンス」39社、「電子情報機器卸・小売」16社で構成されます。

売上高は2兆5,699億31百万円で前年同期比は5.9%増でした。営業利益は2,053億96百万円(営業利益率8.0%)で23.6%増、経常利益は2,125億75百万円で27.3%増、純利益は1,494億31百万円(純利益率5.8%)で28.5%増でした。

就業者1人当たりの売上高は2.3%増の2,107.3万円、営業利益は19.5%増の168.4万円、経常利益は23.1%増の174.3万円、純利益は24.1%増の122.5万円でした。

◼️ ネットサービス108社 増収減益

ネットサービス108社は「ASP」17社、「クラウド基盤」8社、「マーケティング支援」17社、「オンラインゲーム」7社、「広告代行」6社、「コンテンツ配信」12社、「情報提供・出版」11社、「求人・求職」9社、「通販(EC)」9社、「業務受託(BPO)」12社で構成されます。

主要業務が細分化されているのは、現実社会の諸相にネットサービスが浸透して成長過程にあること、「総合ポータル」と「オンラインゲーム」「EC」「広告」「BPO」などが融合して「スーパーアプリ」に発展するなど、ネットサービスそのものが変容しつつあることを示しています。 

売上高は1兆9,235億75百万円で、前年度同期比は2.0%増でした。営業利益は7.3%減の2,369億97百万円(営業利益率12.3%)、経常利益は12.5%減の2,405億75百万円、純利益は10.7%減の1,573億27百万円(純利益率8.2%)となっています。

就業者数は1.8%増の10万3,403人でした。内訳は正規雇用が7万4,957人、非正規雇用が2万8,446人(非正規雇用率27.5%)となっています。

就業者1人当たりの売上高は1,860.3万円で前年同期比は0.2%増でした。営業利益は229.2万円で9.3%減、経常利益は232.7万円で11.3%減、純利益は152.1万円で12.3%減となっています。

◼️ 受託サービス92社 増収増益

受託サービス92社は「業務ソフト」47社、「組み込みソフト」11社、「システム運用管理」7社、「コールセンター」4社、「情報処理・複合サービス」22社、「セキュリティ監視」1社で構成されます。

売上高は3兆4532億57百万円で前年同期比は8.5%増でした。営業利益は2882億29百万円(営業利益率8.3%)で20.8%増、経常利益は2932億23百万円で14.4%増、純利益は2047億22百万円(純利益率5.9%)で22.4%増でした。

就業者1人当たりの売上高は6.0%増の801.7万円、営業利益は18.0%増の66.9万円、経常利益は11.7%増の68.1万円、純利益は19.5%増の47.5万円でした。非人月モデル型が多いネットサービスと比べ、売上高は4割強、営業利益は3割弱にとどまっています。